(略)
尹錫悦氏を日韓関係正常化に走らせたのは、北朝鮮の金正恩総書記、そして中国の習近平国家主席だったと米国の外交専門家たちは見ている。
マサチューセッツ工科大学(MIT)博士課程の国際政治専門家、ミナ・ポールマン氏は、外交専門誌「ザ・ディプロマット」(The Diplomat)にこう書いている。
「日韓首脳が今なぜ関係改善に動いたのか。直接の原因は北朝鮮だ」
「それを如実に示したのは、訪日に向けてソウルを出発しようとして30分遅れたことだった」
「北朝鮮が大陸間弾道ミサイルを発射、その対応を協議するため国家安全保障会議を緊急に招集したためだった」
「日韓首脳が二国間で外交、安全保障担当者間の協議を5年ぶりに再開させることで合意した背景には、両国が直面する羽詰まった軍事的構成要素があったのだ」
「日韓は、北朝鮮のミサイル発射実験とその軌道追跡に関する情報を共有する軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を再開させる。米国政府はこれを歓迎している」
「日韓首脳が正常化に動いたもう一つの原因は、中国だ」
「中国の軍事的脅威もさることながら、日韓にとって急務だったのは経済安保の構築で協力することにあった」
「日韓が量子テクノロジー開発分野で協力し、中国からの半導体やレアメタルのサプライチェ―ンの依存度を減らすために設定した経済安保協議の枠組み強化は、両国にとって最重要になっていたからだ」
「北朝鮮、中国によるチャレンジこそが日韓関係正常化を急がせる最大要因といえる」
「日韓の和解は、岸田訪韓、尹錫悦氏のG7広島サミット出席、韓国の『日米韓加クアッド』(カナダが提唱している日米韓加4か国同盟)への参加に発展していくのか、注視される」
「日韓首脳会談は両国にとって正しい方向への第一歩だが、両国が健全で、信頼性、弾力性のある軍事的、経済安保協力と位置付けるには、まだ長い道のりがありそうだ」
(What’s Driving the Japan-South Korea Thaw? ? The Diplomat)
ポールマン氏の分析には、日韓が抱える国内の歴史問題に配慮するあまり日韓関係正常化の行方をネガティブにとらえる古い世代の外交専門家とは一線を画す、新世代の研究者のフレッシュな視線が注がれている。
岸田訪韓の直前まで「ホワイトハウスは、元徴用工問題で日本政府の生ぬるい反応に失望している。岸田氏は訪韓でもっと何かすべきだ」(ビクター・チャ戦略国際問題研究所=CSIS=アジア・コリア部門副理事長)といった分析を繰り返してきたスタンスとは、明らかに異なっている。
(S. Korean, Japanese leaders meet again to improve ties | AP News)
日韓サプライチェーン構築で米国を援護射撃
一方、ワシントン・ポストのコラムニスト、ジョシュ・ロギン氏は「日韓を和解させ、結び付けたのは中国だ」と論じている。
同氏には『Chaos Under Heaven: Trump, Xi, and the Battle for the 21st Century』の著書がある。
「日韓による新たな動きは、ワシントンがああしろ、こうしろといって動いたものではない。事実、バイデン政権は日韓の和解で目立った動きはしなかった」
「ワシントンは、アジアでの動きを常に米中関係のレンズで見る傾向がある。ところが日韓は中国の軍事経済面での拡張主義に危機感を抱き、双方が自主的に協力関係を求め合ったのである」
「日本は今後5年間に防衛費を倍増すると言い出した。韓国は中国の市場、サプライチェ―ンへの依存を減らすことで地域的安全保障を優先する方針に踏み切った」
「そのことが経済安保で中国と激しい競争する米国にとってありがたいことは言うまでもない」
(Opinion | China is pushing U.S. allies South Korea and Japan together - The Washington Post)
(Chaos Under Heaven: Trump, Xi, and the Battle for the Twenty-First Century)
(略)
岸田訪韓を受けて、日韓首脳にとっては、台湾有事以前、有事に日韓軍事力が米軍とどのような連携をとるかも協議せねばならないアジェンダになってきた。
そのためにも韓国の「日米韓加クアッド」参加は必要不可欠になってきた。
全文はソースで
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/75081