ー前略ー
21世紀のこの時代に、隣の韓国でクーデターが起こるなど皆様も大層驚いたことだろうと思いますが(ちなみに韓国での戒厳令は、
45年ぶりです)、韓国大統領には北朝鮮との有事などを想定し、こうした「戒厳令」を出す権限が与えられているのです。
実際、尹大統領は非常戒厳を宣言した際、国会そのものが「北朝鮮の共産主義勢力」と結託した「恥知らずな親北朝鮮勢力や反国家勢力」
である野党議員達に占拠されており、「自由民主主義の基盤であったはずの国会が、それを破壊する怪物と化した」が故に、
「北朝鮮に従う勢力を撲滅し、自由憲政秩序を守る」と宣言しています。こうした発言は全て、自らの戒厳令は憲法に乗っ取った正当な
政治判断なのだという事を主張するものです。
しかし、このクーデターに対して国民は猛反発します。
司令部が禁じている筈の「デモ」が拡大し、国会議事堂の門にサツ到し、議員たちは司令部が同じく禁じている筈の「国会決議」を行い、
大統領の措置解除を決定しました。
その結果、尹大統領は「立法府の命令に従う」と述べ、戒厳令をわずか6時間で解除する決定を下しました。
・国民の7割、今回のクーデターを「内乱罪に該当する」
この顛末を見れば、尹大統領は、この戒厳令が「成功」し、国民が一定程度「受け入れる」と考えていたように思われます。
繰り返しますが、尹大統領が言うように、野党が「恥知らずな親北朝鮮勢力や反国家勢力」であり、
「自由民主主義の基盤を破壊する怪物」であるとするなら、戒厳令を出し、国会活動を軍隊で強制的に禁止することが正当化されるの
であり、かつ、そうした尹大統領の見解を多くの国民が支持してくれるのなら、その戒厳令は、民主主義的にも正当化され得るからです。
しかし、その尹大統領の目算は完全に外れたわけです。実際、国民の7割が今、「大統領のこの戒厳令は内乱罪に該当する」と
回答しているからです。(NHK、12月5日「韓国 大統領の弾劾議案 採決は見通せない状況【5日の動き】」)
ですがそんなこと、別にアンケートするまでもなくスグに想像できそうなことです。今年の総選挙で野党が圧倒的な勝利を収め、
そして、大統領支持率は2割を割り込んでいるわけですから、自身のクーデターという「トンデモ無い」決断が国民的支持を受ける等、
万に一つもあり得ないだろうと、いとも容易く想像できる筈です。
つまり、尹大統領は、妄想でも見ていたかのように、完全に世論を読み誤ったものと推察されます。誠に愚か極まりない話しですが、
少なくとも公表された情報から推察するに(無論、新たな情報が明らかになればその限りではありませんが)、
その可能性以外思い当たりません。
ー中略ー
・英米に比した日本のオールドメディア「レベルの低さ」
ところで、今回の件はそういう韓国の問題のみならず、欧米に比した日本のマスメディア(所謂オールドメディア、というや●つですね)の
レベルの低さを露呈するものでもありました。
何と言っても日本のマスメディアは、公表された事実情報だけを列挙し、一部識者達の声を断片的に挿入しているだけで、
英米が的確に伝えている「物事の本質」についての情報を一切提供してはいなかったのです。
今回は「海外の重大ニュース」だということで、日本、米国、イギリスというそれぞれの国が『外国』のニュースを報道するという
同一条件で書かれた記事を、横並びに比べることができたが故に、「日本のオールドメディア」のレベルの低さがクッキリと
浮かび上がったわけです。
日本では兎に角、我々一人一人が、日本のオールドメディアの情報には十分に注意しつつ(もちろん、SNSにはもっと胡散臭い情報も
多数あるでしょうからそれにも警戒しつつ)、個々の報道情報の「真贋」を見極めて行かざるを得ないでしょうね。
是非、これからもメディアやSNS情報には注意して参りましょう。
藤井 聡(京都大学大学院工学研究科教授)
全文はソースから
現代ビジネス 12/7(土) 6:04配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/96ca18aad023c9d0a91e94db87696c6769bb8ca5